制度精神療法語彙集

ラボルド精神病院スタッフ来日講演に備えた予習ノートです。勉強するたびに書き足していきます(※完璧は目指しません)。

・Jean Oury : Onze heures du soir à La Borde (1980)

・Jean Oury:Psychiatrie et psychothérapie institutionnelle (2003)

・Serge Didelet:Jean Oury : Celui qui faisait sourire les schizophrènes (2017)

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■établissement(施設)

 グローバル社会に浸っていて、かつ国家のモノサシと関わりのある構造。行政による管理調整に対応しなければならない。

 

■institution(制度)

 施設のなかで発展しうるもので、ほとんど無限の数と多様性を持つ。➡ 説明になってないので引き続き探索。 

 

■groupe(集団、グループ)

 さまざまな制度の支え(基底材)となりうるもの(施設は集団を支えとしない)。

 

■collectif(集合、寄せ集め、コレクティフ)

 施設でも制度でも集団でもないもの。一種の集合(ensemble)であり、超限の論理に従う。登録の表面? ➡ 制度精神療法の母胎?成立根拠?

 

aliénation(疎外、精神異常)

 社会的疎外と個人的疎外(=精神異常)の二重の意味、二つの次元を指す用語として使われる。制度精神療法は施設や制度の分析を通して、患者だけでなく医療者やスタッフなどの関係する人間すべての脱疎外(désaliénation)を目指す。

 

■désaliénation(脱疎外)

 病院という管理的な施設の内部で、商品やお金の交換(経済的交換)、言葉の交換、性的な交換(詳細不明)といった「交換」が行われうる状況のこと。制度はこうした状況を生み出すことにかかわる。

 

clubs thérapeutiques(治癒を促すクラブ[活動])

 病院内で行われる病者たちとスタッフたちの主体的で集団的で社会的な活動。施設の論理に捕らわれず、脱疎外や脱罪責性へと向かい、歴史性を持つようになり、集団療法や社会療法などにつながる、などなどの特性を持つ。

 

■transfert dissocié(散らばった転移)

 統合失調症の人に固有の転移の形で、人や物、場所などに転移が部分的に散らばっている状態のこと。

 ➡ 類義語:multitransférentiel(複数転移性の)

 

■éclatement des lieux(場所の炸裂)

 統合失調症の人は一見そこにいるように見えて常に別の場所にいる。別の一地点にいるのではなく、さまざまな場所にいる。言い換えれば、統合失調症の人にとっては場所の炸裂と呼べるようなものがある。

 

■espace transitionnel(移行空間)

 ウィニコットの用語。統合失調症の人では、この空間が虫食い状態や壊れた状態にある。

 

■non-lieux(場所ならぬ場所)

 移行空間がずたずたの状態のこと。

 

■perturbation du rythme(リズムの乱れ)

 精神病者において問題となっているもの。ここでいうリズムの乱れは、時間‐空間における出現の乱れを意味する。

 

■bouts de corps(身体の切れ端)/corps dissocié(散らばった身体)

 身体が解体されてバラバラになっている状態で、精神病者が抱く幻想。

 

■greffes de transfert(転移の接ぎ木)

 ジゼラ・パンコフの用語。精神病者の身体の再構築を可能にするための概念であり技法か?

 

■réseau de lieux(場所のネットワーク)

 

■espace du ≪dire≫(〈言うこと〉の空間)

 

*「散らばった転移」‐「場所の炸裂」‐「身体の切れ端」‐「リズムの乱れ」が関連しており、「転移の接ぎ木」や「場所のネットワーク」、「〈言うこと〉の空間」などの概念によってどのようにバラバラなものをまとめていくかが実践的な課題。ここに「コレクティフ」、「集団」、「制度」が絡んでくるが、その辺りはまだはっきりとはしない。

*制度精神療法では「空間」に関わる実践が重要!

 

■fantasme(幻想)

 ラカンの用語。

 

■rencontre(出会い)

 統合失調症者、精神病者が〈ここにいるようでいて他の別の場所にいる〉というあり方をするため、彼らとは〈共に生活することができていない、出会えていない〉と考える。そのため、どのようにして出会うかが課題となる。

 

■accueil(歓迎)

 「出会い」と関連して、病者と共に生活するために大切にされる実践。

 

■singularité(特異性)

 

■liberté de circulation(うろうろする自由)

 「散らばった転移」を起こすためには、病者には歩き回る自由が必要。歩き回ることによって散らばった転移の「布置(星座)」ができる。布置ができるためには、歩き回れる環境にはさまざまな質の違うものが寄せ集められていること(コレクティフ)が望ましい。逆に、物が乏しく、空間が均質で、異質性が少ないと転移が起こりにくく、布置ができにくいということか。

 

■pathoplastie(病理形成)

 病気が環境によって作られること。

 

■constellation(布置)

 散らばった転移のひとつのまとまり。布置が変化することで病状が回復することがある。

 

■normopathe(正常病、規範狂)

 établissement(施設)の規範(=管理・運営・経営・ヒエラルキーなどに関わり、疎外を生み出すもの)に忠実に従う者のこと。

 

■disponibilité(融通、余力)

 看護師や世話人が(不測の事態に対して気力や体力、時間、認知的リソースなどを?)割く能力。

 

■vigilance(警戒)

 

■prise en compt(考慮?)

 → ウリが大切にした考えのようだが詳細不明。調査中

 

■sous-jacence(水面下)