Restart

精神分析と横断性』と『アンチ・オイディプス』を繋ぐ論文を書こうと考え中。
しかしなかなか手ごわい。今年はバイトも含め仕事量が増えたので、研究に投入できる時間も少ない。
こりゃ長期戦になりそうだ。
雑務に追われて注意が散漫になり、かつ時間を贅沢に研究につぎ込めない今こそ気を引き締めないと!

てなわけで、またトレーニングを再開。
論文の構想はふたつあるが、とりあえず「集団幻想」論から。

といってもこれが厄介で、理解が難しい。
しかし重要なのは歴然としており、『精神分析と横断性』(法政大学出版局)に収められている25本の論稿中10本に登場する(見落としている可能性もあるので注意)。
列挙すると以下。
 
7.転移
9.横断性
10.制度的精神療法に関する哲学者のための考察
11.集団と個人
12.因果性、主観性、歴史
17.一九六八年六月末の討論から
18.学生、狂人、カタンガ
19.機械と構造
20.分析の裏返しとしての教育に関する考察
25.われわれはみな小集団なり
 

「7.転移」(1964年)が「集団幻想」概念の初出で、同じく「横断性」概念も初出。正確に数えてはいないが、集団幻想のほうが横断性よりも言及される数は多い。ドゥルーズも集団幻想の重要性に気づいており、序文で明確にこう述べている。
 
「制度的精神療法に対するガタリ独自の寄与はいくつかの概念からなるが、ここでその成り立ちをたどってみると、二種類の集団[主体‐集団/隷属‐集団]の識別、集団的幻想と個人的幻想の対置、横断性の概念の着想ということになるだろう。」(邦訳14頁)
 
主体‐集団や横断性の概念の重要性はしばしば指摘されてきたが、ドゥルーズがそこに含めている「集団幻想」の重要性の主張はこれまで聞いたことも読んだこともない。この概念が見落とされてきた可能性があるので、この概念の機能を確かめることが研究の核となる。要するに「主体‐集団」と「集団幻想」と「横断性」の概念連関が描く世界像を捉えることを目指す。

ちなみにガタリは集団幻想をフロイトの考察から導き出してきており、さらにビオンのいう「集団の幻想」とは異なると述べている。この辺は確認が必要。
また、隷属‐集団から主体‐集団への移行において機能する幻想を「過渡的幻想」と呼び、「集団幻想」と区別している。

それから、作業としては『精神分析と横断性』と『アンチ・オイディプス』の繋がりを捉えないといけないが、これを繋ぐ項のひとつが「集団幻想」である。『アンチ・オイディプス』では横断性という概念はほとんど登場していないのではないかと思われるが、集団幻想は主体‐集団とともにしばしば登場している。しかも、『精神分析と横断性』のときと、概念の使い方が若干異なるような印象を受ける。この点をどう考えようかというのが、ひとつの課題である。この辺りは『アンチ・オイディプス草稿』も噛ませて、探求できるか。

その他、あと数個ほど重要概念があって、それらとの連関も押さえれば、ガタリ研究としては一定の水準は超えられるか。
問題は、ガタリ研究以上の射程を持たせられるかどうかにかかっており、現代の喫緊の問題に絡ませられるかどうかが勝負どころ。
さぁ、ぼちぼちと内容を丁寧に詰めていきましょう!