東畑開人『野の医者は笑う』読了~

アカデコミカル・ノンフィクションというジャンルを切り開いたようで、確かに笑えて学べる作品でした。正規の医学のアウトサイドにいる怪しげなヒーラーたち(ユタなどのシャーマン系からスピリチュアル系、臨床心理の亜流、占い、瀉血など)を「野の医者」と呼び、その人たちの治療を受けたり交流したりするなかで、自身の営んでいる臨床心理を問い直すという医療人類学的著作ですが、突き抜けているのでちょっと感動的ですらあります。療法はかなり怪しげですが、それが効くことを否定せず、なぜ効くのか、何が起こっているのか、癒えるとは何か、野の医者の社会構造はどうなっているのかを真剣に探っていて、納得できることも多いです。「スキゾ分析」という怪しげな臨床実践を追っている自分としては他人事じゃない部分もあって、ドキドキしましたwww

またそれだけでなく、フィールドが沖縄なので、一種の沖縄現代社会史・沖縄文化論(宗教性や歴史性、女性の社会的・経済的地位など)という側面でもとても興味深く読めました。

 

さて、次はこれ行きます。

フェリックス・ガタリ: 危機の世紀を予見した思想家 (叢書・ウニベルシタス)

フェリックス・ガタリ: 危機の世紀を予見した思想家 (叢書・ウニベルシタス)

 

 ガタリの論文を書いた時に食傷気味になってしまい、しばらく向き合えませんでしたが、時間を置いたので少し回復してきました。部分的には原著で読んでいましたが、邦訳が出るのはやはりありがたいです。イントロを読むと結構勉強になりそうですね。楽しみです!

ちなみに邦訳の序章7頁に「円熟期を迎えたガタリは、自分のことをもはや精神科医とは見なさなくなっていた」とありますが、ガタリが「精神科医」だったことはないはず……ジェノスコが間違ってんのかと思って原著の方で確認するとpsychoanalystと書かれていたので、ここは正しくは「精神分析家」です。